【前回の記事を読む】野球部に入って思いっきりバットを振れる環境に行きたいとだけ考えていた――中学校生活が始まり、新たな仲間たちと出会う
第1編 野球との出会い
2回表 出会い
九班の番が来て、「ウチの班員は、皆、野球が大好きで、多分、全員が野球部に入ると思います。メンバーは、ジョニー、ジョン、ジョー、ミッキー、そして、このオレ、トムです。よろしく!」と、トムは、他の班長とは違って自分たちの本名は名乗らず、明るく、生き生きと、大きな声で話した。
他の班のクラスメイトたちは呆気に取られたようだった。
僕はトム、ジョン、ジョー、ミッキーという仲間に出会った。この五人はクラスでの座席が近く、また家に帰る電車の方向が同じだったので、すぐに仲良しになった。
四月から五月にかけて、体育の授業では、スポーツテストというのがあり、百メートル走、千五百メートル走、走り幅跳び、ソフトボール投げなどの記録測定が行われた。
ソフトボール投げで、僕は五十五メートルを投げ、クラスで一番になった。トップの四人は、僕以下、トム、ジョン、ジョーの順だった。ミッキーは四十メートルで、少し落ち込んでいたが、決して悪い記録ではない。
百メートル走では、ジョーがクラスで一番。千五百メートル走では、ミッキーが、何と、学年で一番の記録を出した。
六月になれば、中学一年生の僕らもクラブ活動を開始できるようになる。その日が僕には待ち遠しかった。帰りの電車の中で話していて、トム、ジョン、ジョー、そして僕の四人は、野球部に入ることを申し合わせ、約束した。しかし、ミッキーだけは、まだ決心がつかないでいた。
「ミッキーも一緒に野球をやろう! せっかく、知り合った仲だし……」僕は、既に仲良くなった五人全員で野球をやりたいと心の底から思い、ミッキーを勧誘し続けていた。「でも、練習も厳しそうで、ついて行けるか少し不安だよ」
「千五百メートル走は、僕ら五人の中でミッキーが一番速かった。大丈夫だよ。もし、ついて行くのがきつかったら、その時、考え直せばいい。とにかく、僕ら、皆で入って頑張ってみよう!」
「ジョニーがそこまで言うのなら、とも思うけど、一晩考えさせてくれ」ミッキーが言った。
「わかった。良い回答を期待しているぞ!」
その翌朝、ミッキーは登校すると僕とトムが話しているところに来て、「親にも相談して、野球部に入ることに決めたよ。だから、皆と一緒に頑張ってみる」と言った。
「ヨシッ! やった!」僕は嬉しさのあまり、思わずミッキーを抱きしめた。
「おお、ミッキー、やっと決心してくれたか! そうこなくちゃ!」トムも満面の笑顔で歓迎した。
ジョンとジョーも登校して来て、ミッキーが野球部に入る決心をしたことを伝えると、「よくぞ決心した! ミッキー!」とジョンが言う。「オマエ、最高だ!」とジョーは笑って言うと、ミッキーの左肩辺りを強く叩いて祝福の意を示した。
ミッキーは、ヨロケながらも笑っていたが、あの大きなジョーの手で叩かれたミッキー、かなり痛かったと思う。