六月が来て、僕ら五人は満を持して野球部に入部した。
僕らが中学一年の当時、野球人気はすごく、多くの人が野球部へ入部した。驚くほど多くの人がいて、こんなにたくさん人がいたら、バッターボックスでボールを思いっきり打てる機会があるのかと、少し不安になる。
中学一年生の僕らが野球部の練習に出た初日、僕はトムに「何でこんなに多くの人が集まるのだろうね。野球は九人しか試合に出られないのに、こんなにたくさんいたらどうやっていけばいいのか」と嘆く。
「野球は、皆が好きなスポーツだからこれだけ集まるのも仕方ないのか。しかし、多いよな」トムも当初の人数の多さに驚きを感じていた。
「こんなにたくさんの人がいたら、レギュラーポジションを取るのも簡単じゃないだろうなぁ」と僕。
「オレは、とりあえず、ピッチャーを志望し、エースを目指すよ。ジョニー、オマエは肩がいいから、キャッチャーが良いんじゃないか?」とトムが言う。
「そうだな。キャッチャーをやりたいと言う者は多分ほとんどいないだろうから、キャッチャーをやってポジションを取るのが賢いかもしれない」僕とトムが話していると、そこにジョンがやって来た。
「やぁ、ジョン。凄い人数が野球部に集まって来ているよ」トムはジョンに話し掛けた。
「そうだな。すごい人数だ。まぁ、でも、頑張ってみようぜ!」とジョン。
野球部の顧問の先生がやって来て、「たくさんの人が集まってくれてありがとう。これから守備の練習をやりたいので、皆、それぞれがやりたいポジションについてください」と言った。
ファースト、サードの守備位置に多くの者が行き列を作る。やはり、王選手、長嶋選手に憧れている者が多かったのだろう。セカンドやショートにも五人以上の者が列を作った。トムをはじめピッチャーにも長い列ができた。レフト、センター、ライトの外野にもそれぞれ複数名が行き列を成す。
ところが、あんなにたくさんいる部員だが、キャッチャーのポジションにつこうとする者は誰もいなかった。どこにも行かずにまだ突っ立っていた僕に、顧問の先生は「君、キャッチャーのポジションに入らないか。キャッチャーがいないとノックもできない」と言う。
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