「香子は勘違いしている。ルミは、何を香子に言ったんだろう。馬鹿野郎が!」腹が立つ。
香子に電話をするが出ない。何回も、何十回も出ない。そうだ、ラインだ。
「今どこ? 迎えに行くから場所を教えて!」
「勘違いだ。彼女はうそを言っている。頼むから返信して」
……
「話を聞いてくれ!」
……
「愛しているのは香子だけだ。本当だ!」
……
電話も、ラインも出ない、どうすればいいのか分からない。
二時間後にラインの返信がきた。
「ごめんなさい。今は会いたくない。一人で居たい。大丈夫、ホテルに居るから」とだけ。
一人で居ると家がこんなに広いんだと思った。香子がいないだけで! 寂しい。香子が帰らなかったらどうしよう。不安がよぎる。離婚したい、といったらどうしよう。恐怖感。……どうすれば分かってくれるか模索。
僕は改めて、香子の存在を確認した。絶対に香子の手を離してはだめだ。抱きしめたい。どうしようもなく。
土曜日、日曜日とじぃーと待っていた。電話にも、ラインにも返事がない。長い、寂しい、怖い週末だった。
香子の事だから、必ず、月曜日の午前中に帰ってくる。僕の事が心配だから、必ず帰るはずだ。翌日の準備をしに。
待っていよう。
十時半に玄関の開く音がした。僕は仕事に出かけたと思っているだろう。隠れて見ていた。小走りに寝室へ向かっている。僕のパジャマを手に取り、
「丈哉さんの匂いがする」と顔に当てている。声を殺して泣いている。
「香子」と呼んだ。