「あ、川場さんお疲れっす」

夜勤の配送ドライバーの川場さんは、明るく愛想のいい人で、大輔が夜勤の時可愛がってもらっていた。川場さんの娘が大輔と年が近かったことも関係してるのかもしれない。

「川場さん、今日どこ配達ですか?」

「今日は……あれ? どこだったかな?」

「しっかりしてくださいよ~、お気をつけて」

「ありがとう、大ちゃんも帰り気をつけてなー」

川場さんとはそこで別れ、大輔はロードスターのエンジンを掛けた。

「ただいまー」

大輔は帰宅すると、いきなり母から段ボールを渡された。

「おかえり、公民館からなんか届いたよ」

「なんやこれ? 1996年3月15日? ちょうど20年前やん」

段ボールにはその日付が書いてある紙しか貼っていなかった。

「お母さんも自治会長さんに言われるまで忘れてたんやけど、20年前、公民館にタイムカプセル埋めたの覚えてる? あんたが6歳の時や。その中身や」

「あーなんかやってたかも。何埋めたか全然覚えてないわ」

大輔は、部屋に行って早速段ボールを開けた。中身は初期のロードスターのミニカーと手紙だった。

「うわ! なつかしいなー。初期のロードスターや! これでよく遊んでたわ!」

決して綺麗とはいえないミニカーだが、20年ぶりの対面に少し感激していた。

「んで、これは……手紙?」

それは、6歳の自分が書いた20年後の自分への手紙だった。大輔は手紙を見た。そこには……。

 ――――「しょうらい、なにになってますか?」――――

夕飯とお風呂を終えた大輔は、部屋に戻り、再度手紙を見ていた。

「将来ね……」

大輔は少し落ち込んでいた。なぜなら、この「20年前からの質問」に胸を張って答えられないからだ。別に、今の自分を情けなく思ったり絶望しているわけではない。ただ、もしも今の26歳の沢崎大輔を20年前の沢崎大輔が見たらどう思うのだろうか?

 

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