プロローグ 

1996年3月15日千山市公民館。

この地区では来月から小学生になる子供は、児童クラブが用意したタイムカプセルに思い出のものと、20年後の自分にメッセージを書いた手紙を埋める恒例行事がある。

「大輔、何を埋めるか決めた?」

母が尋ねた。

「ユーノスロードスターのミニカーにする!」

大輔はいつも遊んでいたロードスターのミニカーを選んだ。

「いいの? 20年間カプセルに入れておかないといけないんだよ」

そう言って母は再確認した。

「だからこそだよお母さん。だって家に置いてたらなくすかもでしょ。それにさ……来月から小学生になるし、ミニカーで遊ぶのは卒業したいんだ」

「そっか……」

母は改めてわが子が小学生になるんだと認識した。

「これで全員カプセルに入れましたね?」

地区の児童クラブ会長が尋ねた。

全員入れたことを確認すると早速、カプセルを埋める作業に入った。作業中、母は大輔にこう尋ねた。

「そういえば大輔、手紙にはなんて書いたん? ロードスターに乗ってますかとか?」

「うーんとね……それも考えてたけれど……」と大輔は言葉を詰まらせた。するといきなり、その場にあった紙に勢いよく何かを書いた。

「やっぱ20年後だからさ!」と紙を広げて母に手紙に書いたメッセージを見せた。そこには……。

 ――――「しょうらい、なにになってますか?」――――