紙漉きするたかちゃん
お婆さんが、孫娘のたかちゃんを連れて、住んでいる県の隣の県に行った時の話だ。たかちゃんの父親の親類に、製紙工場を経営している人がいるのだが、そこで、たかちゃんは、紙漉きを体験した。
「昔は、こうして紙を漉いていたんだよ」
「紙が無ければ、書く事も読む事も、何もできなくて困るからな」
紙を漉く事で、紙が無くて困っている人の人助けになるのだと、たかちゃんは知った。
「あれ! ああ、どうして? 何で?」
しかし、上手く行かない。器用なたかちゃんでも、こと紙漉きは上手にできない。
「はははは、初めてで上手く、紙を漉ける人はいないよ」
紙を上手く漉こうと、四苦八苦しているたかちゃんを見ながら、老夫婦は微笑んでいる。そんな中で、紙漉きをしている老夫婦が、親類に当たるたかちゃんを置いていけと、婆さんに言う。
「なあ婆さん、この子、要らないのなら、ここに置いていけ!」
「だめだよ、あたしの杖代わりに連れて来ているだけだからね」 と、婆さんは相変わらず、偏屈に申し出を断った。
だが、それにはホッとするたかちゃんだった。
それは紙漉きが中々難しいからだった。