お婆さんの特技

たかちゃんの婆ちゃんは、色んな特技を持っているが、特に嗅覚に優れている。「いいかい、甜瓜の甘く熟したのは、お尻の匂いを嗅げば分かるんだよ」

「そうなの?」

熟した甜瓜の匂いを嗅ぎ分けるのが得意な人だった。

お婆さんは、必ず熟した甘い甜瓜を選び出したが、しかし、たかちゃんは、そのお婆さんの姿が、余り好きでは無かった。

「たか、井戸水で冷やした甜瓜を持っといで」

「はい、ばあちゃん」

「うわー、凄く甘い!」

それでも、たかちゃんは、井戸水でキンキンに冷えた甘い甜瓜が大好きだった。

流石は過熟の選別の達人、婆ちゃんが選んだ甜瓜は、必ず果肉が丁度良く柔らかく熟している。

真夏の暑い日に食べる、とっても甘い、あまーい甜瓜。

そんな、たかちゃんの家の庭には、桃の木が有り、白い大きな桃がたわわに実る。

その甘さは格別で甘くて瑞々しい。たかちゃんと家族は、毎年、その桃の木に桃が実るのを楽しみにしている。

たかちゃんの母親は、学生時代に親類の甘味処で接客をしていたので、思い出した様に甘いお菓子を買って来る。 たかちゃんの好物は、きな粉餅にきんつば、あんころ餅、と、色々だが、しかし、たかちゃんの母親には、専ら好きな食べ物が有った。

「ねえねえ、たかちゃん、一番甘くて美味しい物を知ってる?」

「なあに、美味しい物って?」

「これよ、このでんぶをご飯に乗せてね、上に砂糖を掛けるとね、美味しくなるんだから、本当に美味しいのよ」

と、母親は、ピンク色のでんぶを、たっぷりと山盛りにご飯に乗せて食べるのが好きらしい。その上の砂糖攻めだ。

それを眺めながら、うっとりとして、

「こんなに一杯乗せて食べるなんて、最高の贅沢だわ!」

と、言いながら、更に、その上に追い砂糖を振り掛けている。

甘いピンク色のでんぶに、どっさりとお砂糖を混ぜ込んで、ご飯が食べられる人だった。

流石のたかちゃんも、お砂糖でご飯は食べられなかった。

 

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