「少しだけでいいですから、お話しさせてください」

若い女性が口をはさんだ。

「じゃあ、十分くらいなら」

結城は渋々承諾した。

中年男と妹を部屋に入れた。六畳ほどの居間にある小さなテーブルの上に散乱していた用紙を急いで片づけた。外でアルバイトをするのが億劫になっていたため、数日前から小学生の算数と国語と社会の試験の採点を請け負うアルバイトをしていた。塾から送られてくる二百枚ほどの答案用紙に点数をつけて送り返す。五十枚ほどの採点を終えたところだった。

「お仕事でもされていたのですか」

中年男が聞いてきた。

「いや、別に」

結城はとぼけた。

中年男が結城の向かい側に胡坐をかいて座った。妹は両足を上品そうに右に折り曲げた。

結城の目は妹の見てくれに釘づけになった。髪型はショートカットで、目が大きい。年齢は二十歳過ぎくらいだ。朱色のミニスカートをはき、大きな胸の谷間を強調したグレー色の半袖のシャツを肌に密着させていた。瞳を少し右にずらせば、妹のあらわになった胸の谷間と太ももを眺めることができた。兄とは年齢が随分と離れているようだ。末っ子なのだろうかと漠然と思った。

 

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