器用に何度も折り返し、菱形になったチヨガミの下の部分を両方向から中心で合わせると、折り合わせた下の部が二本足のようになっている。その二本足を上に向かって中心に折り曲げると、先端はまるで剣の形。片方の剣の先端を今度は下に折り曲げると、皆の視線がLisaの指先に集中する。

言葉を発することの出来ない緊張した静寂が、この広いリビングを包み込む午後のティータイム。この静寂を真っ先に破ったのはLisaの明るく大きな声。

「さあ出来たわ。Marlon、手を出して」

えっ? これで完成?

それは五角形の頭の部分だけが延びた不思議な形をした物だった。僕が手を差し出すと、Lisaはその綺麗なオリガミの両端を摘んで中心から外に向かうようにそーっと広げた。すると、その不思議な形をしていたオリガミはほんの一瞬で空を飛ぶ鳥に!

「これは〝ツル〟。Marlonにたくさんの幸せが訪れますように」

そう言って剣のように伸びたツルの尾を右手で掴み、それを僕の手の平にそっと乗せてくれた。たった一枚の紙から作られた空を飛ぶ美しい鳥。僕は何を話して良いのか分からずそのツルを見つめたまま言葉を失った。息をするのを忘れたようにしばらくツルを見つめていた祖母が目を大きくして両手で胸を押さえ、

「なんて素敵なのかしら。今にも空に舞い上がっていきそうね。本当に美しい。素晴らしいわ」

そう言ってLisaの肩を優しく抱いた。Lisaは隣に座る祖母を見上げながら、

「これは大切な人の健康や幸運を祈るときに作るの」

そう言って、隣に座る僕を見つめ優しく微笑むLisa。彼女の瞳を見て大きな息を一つ出すと、今までの不思議な息苦しさからやっと開放された僕は、なぜか急に恥ずかしい気分になってしまった。Lisaの顔も、祖父母の顔を見ることも出来ない。僕は顔を赤らめうつむいた。

……Lisaがママのように僕を抱いてくれたら、思いっきりホッペにキスをしてあげるのに。Lisa……だから僕を優しく抱いてよ……Lisa……

 

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