僕が5歳。

彼女は17歳。

僕らは出会った。

いつも天使のような微笑みを浮かべていたLisa。

突然の別れのときも。

ケンブリッジと東京、二人が離れた距離、9500km。

長い間、心の一番奥底に凍らせていた僕の初恋。

幼い頃、心に抱いた思い。

あの少女を今でも好きだなんて。

触れることの出来ない幻を追いかけ、僕は今東京へ。

~ 出会い Marlon & Lisa ~

なんてかわいい女の子なんだろう!

心臓が止まった感覚を、人生で初めて覚えた瞬間。

眉を隠すように綺麗に整えられた前髪。肩まである真っすぐな黒髪は、部屋に差し込む太陽の光を浴びて、黒い真珠のように輝く。

大きな黒い瞳は優しく僕を見つめ、微笑む唇はほんのりと赤い。白のスタンドカラーにふくらはぎまである紺色のフレアのワンピース。

丈の短い赤のカーディガン。くるぶしまである白いソックスに黒のローファー。遠く日本から来たその少女は、右手の細い指先をテーブルに乗せ、ソファーからゆっくり立ち上がるとテーブルの横に立ち、背筋を伸ばし、前でゆるく手を組み僕を迎えてくれた。

天使って本当にいるの? 僕は息をしている?

何か分からない感情が生まれ、心臓が止まっていないか思わず胸を押さえ確かめた。