【前回記事を読む】心臓が止まった感覚を、人生で初めて覚えた瞬間――5歳の少年が恋をしたのは、17歳の少女だった。切なくも温かい物語が始まる
~ 出会い Marlon & Lisa ~
僕はLisaが本当にいなくなるんじゃないかと思い、慌ててテーブルの下から顔を出して、Lisaのほうへ飛び込むように両手を伸ばしテーブルに顔を突っ伏した。
神様、僕のお願いを聞いて!
するとLisaが素早く僕の手を優しく包んで言った。
「Marlon捕まえた!」
Lisaの両手に包み込まれた僕の手に伝わるマシュマロのような感触。僕は神様に祈るように心の中で叫んだ。
お願いLisa、このまま僕の手を離さないで!
と心の中で思いながら恐る恐る顔を上げると、そこには小さく何度も頷き、僕を優しく見つめ微笑むLisaが見えた。
「もちろんよ。Marlon」
ここにいてくれる、その言葉だけで体中に幸せが満ちてゆく。
「そうだわ、Marlonにプレゼントがあるの。私の横に座って見ていてね」
そう言うとLisaは左手でソファーをポンポンと2回叩いて僕を隣に座るよう促した。Billの隣からお尻を滑らせるようにソファーから降りようとすると、Billは僕を抱き上げて降ろしてくれた。小さな体から溢れ出した嬉しさで、僕は急いで向かい側に座るLisaの元へ一目散。Lisaの隣へジャンプするように座ると、僕は嬉しくてLisaの顔を見上げた。
微笑むLisaの笑顔は僕に幸せを与えてくれる天使。その優しい笑顔のまま、Lisaはソファーに置いてある白地に大きな向日葵の絵が描かれた小さなポーチから何かを取り出した。それは赤地に黄色と白の小花が印刷された美しい10cm四方の紙。口元に微笑みをたたえたLisaは、その美しい紙を奇妙な形に折り始めた。そしてDatとBillに話し掛ける。
「これはチヨガミって言うの」
祖母は両手で頬を押さえ首を横に振り、溜息をついて祖父に言った。
「なんて美しい紙なの。これが日本の伝統文化なのね。Bill、よく見える? Lisaが我が家に来てくれなかったら、私達は遠い東洋の日本の文化に触れることはなかったわ」
髪を耳に掛け、伏せた瞼の横顔が美しいLisaは、最初に四角いチヨガミの端と端を合わせ三角に折った。そして迷いなく、流れるように動く細い指先で、美しいチヨガミに魔法を掛けるように不思議な形を作っていく。正確な鋭い直線で折られてゆくそれは、時に踊るようにさえ見えた。