工業高校に入ってからも、サトルは相変わらず悪い仲間とつるんでは警察沙汰を起こした。両親はオロオロしながらも、為す術がなかった。

そんなサトルがプロのカメラマンを目指し、写真スクールに通い始めたのは十八歳のときだった。世界中の湖を見たいから。それがカメラマンを夢見た理由だった。どうして湖に興味を持ったのかは、サトル自身もわからなかった。

ただ世界中の湖を見たいという気持ちを、サトルはどうしても抑えることができなかった。世界を回るお金などあろうはずもないサトルにとって、プロのカメラマンになることが夢を達成する唯一の方法に思えた。有名なカメラマンになって、世界中の湖の写真を撮る。サトルにとって、その第一歩が写真スクールだった。

「オレはプロのカメラマンになるから、写真スクールに行きたい」

サトルの言葉に両親は諸手をあげて喜んだ。このまま大人になったらどうなるのかと、息子の将来を心配していた両親にとって、サトルが自分の意志でカメラマンという夢を見つけたことが、何よりも嬉しかった。

次回更新は8月31日(日)、18時の予定です。

 

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