〜十年後〜

声が無限ではないことが判明してから十年以上が経っていた。

声を出さない世の中に不自由はあれど生活は可能なことから、AI技術の発展とともに世界経済はゆっくりと回復を遂げていた。

テクノロジーの発展が進む世界で、岡本裕翔は中国にいた。

目の前では、たくさんのジャイアントパンダが無我夢中で笹(ささ)を食べていた。

 

裕翔は高校を卒業後、大学に進学し、自然保護活動に取り組む公益財団法人に就職した。

そこで現在は、中国で野生のパンダを保護する活動を行なっている。

ここ近年で野生のパンダの数は二千頭以上になっており、この保護活動が功を奏して野生のパンダの数は増加傾向にある。

 

裕翔は今、北山桜空の大好きだった動物たちを守る仕事をしている。

彼女の死をきっかけに、動物を守るという夢を見つけた。

そして彼女が生きたかった未来を、裕翔は自分の夢に向かって力強く生きている。

 

将来の夢が何もなかった裕翔の未来に、希望の光を与えてくれた。

声の奪われたこの時代に、たくさん声を聞かせてくれた。

「……ありがとう」

彼女に感謝し、裕翔はジャイアントパンダの赤ちゃんに笹を与えた。

傍(かたわ)らの鞄には、パンダのキーホルダーがぶら下がっていた。

本連載は、今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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