【前回記事を読む】「また会ったね、光の子よ?」――深い眠りの中で、小さな男の子が話しかけてきた。英良はとっさに「かける君かい?」
序章 新たな預言
英良の章(一) 振出し
「人間には自覚がないこと、それが一番質が悪いんだ。善人の顔をして人間以外の全ての生物を殺す。それがこういう普通の人間なんだ。分かるかい? お兄ちゃん。だから殺すよ。ほらもう、そろそろこの男は生命が消えそうだ」
ひどいことするな、と英良は一言反論する。
「我々は真の地球意志。それを人間が悪魔などと呼び、忌み嫌うのは何故か分かるかい? ただ、人間にとって都合が悪いから悪と決めつけているだけなんだ。迷惑な話だろう? 我々は地球意志なんだ、分かるかい?」
沈黙が続く。
「その中で人類に肩入れする愚かな連中がいた。その連中は、我々地球意志の間では裏切り者の悪だ。暴走族や暴力団のような存在なんだ。分かるかい? そういう地球意志に反逆し、人類に肩入れし、自然の破壊などの迷惑行為を助長する悪い連中が人類に何て呼ばれているか分かるかい? 彼らは神と呼ばれているんだよ」
「お兄ちゃん、分かるかい? 正義の反対は悪ではない。正義の反対は違う正義なんだ。広い視野を持ち、相手の立場に立つ視点を持てば分かるだろう。分かるかい?」
「なるほどね、分かるよ。かける君は人類に肩入れして破壊行為を行う者、それを神と言ったね? それは一部の人間が自分たちにとって都合のいい存在として神と祀ったと思うよ。ここでお兄ちゃんの言い分とかける君の言い分をぶつけても単なる水掛け論になるけどね」
少し静寂の間が続いた。英良は刺激しない言葉を選び話そうとし、かけるは英良の考えを見通そうと探っているようだ。
「正義が全てでないことは分かるよ。正義の名のもとに害悪を流す者もいる。当然のこと。それで人間は長い間戦争と繁栄を続けた。争いと豊かさ、その歴史だった。かける君の言うことももっともだ。お兄ちゃんは否定しない」