英良は見知らぬ町を歩いていた。見知らぬと言うよりも何か記憶の深い部分で関わり合った場所に違いないと、そう思った。何故だか分からない。説明がつかない何か鈍く重苦しい記憶が硬く封印され思い出そうとすればするほど逃げて行く陽炎のようだ。

「英良。待っていました」

聞いた声がする。英良は声のする方を見た。ジェシカが佇んでいた。

「今日は貴方に伝えなければならないことがあります」

ジェシカは言う。英良は黙っていた。

「簡単に伝えましょう。これから貴方の下に聖地から召喚する者がいます。分かりますか?」

ジェシカは言う。分からない、と英良は答えた。

「そうでしたね。突然聞かれても分かるはずもないですね。私が悪かった」とジェシカは破顔した。ジェシカの目じりには皺が現れ鼻から口角に向かってほうれい線がはっきりと見えた。そう言えばジェシカは何歳なのだろう。背が高く美人な方だったが年齢は詳しく分からなかった。

「私の歳が気になっているのかしら? もう五十よ」

そうジェシカは屈託なく話した。それを聞いて英良は驚いた。

「とかく日本人は歳を気にするものなのね。それを聞いてどうしようというのでしょうね」

ジェシカは半ば呆れたように言った。

「それはともかく、大事なことを言いましょう。先ほども言ったように貴方に付かせる精霊を聖地から召喚します。いいですか英良」

ジェシカの言葉には力がこもっていた。その気迫に英良は押されて言葉を返せなかった。

「しかし全ては貴方の意志次第です。本気で光ある精霊を従え貴方が彼らを使い切らなければ気持ちは伝わりません。彼らも貴方の強い指導力の下働くのですから。分かりますね。貴方が本気を出さなければ彼らも本当の力を出せません。分かりますね英良」

ジェシカは続けた。

 

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