俳句・短歌 歌集 四季 2020.09.09 歌集「忘らえなくに」より三首 歌集 忘らえなくに 【第6回】 松下 正樹 四季がある日本は移ろいやすいのだろうか。 行き交う人々の心や街の景色は千変万化で、過去はさらに記憶の彼方へ押しやられてしまっているかのよう。 だが、南の島々には、あの戦争を経ても変わらぬ日本の心が残されていた。 過去と現在、時間の結び目を探しながら、日本古来の清き明き心を見つける旅の歌短歌集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 牛丼に一品添へてしなやかな キャベツサラダをわれは好めり 牛丼のお肉もお米もアメリカ産 ゆたかな国をまるごといただく 昼どきのお店は人の混みあひて 雀のならぶやうに腰掛く
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『ラーゴ 』 【第5回】 そのこ+W 「お願いだからイタリア人と結婚しないでね」そうは母言った。いざ結婚すると働かない、不倫。日本人女性のイタリア人男性はうまくいかない? マリア・カラスは無理なダイエットで声をダメにしたが、それをさせたのは愛人のギリシアの船舶王、アリストトール・オナシスだったという噂だ。若い時肥満(九十キロ近かったという)だったカラスはオナシスに毎日人参の汁を飲まされてスリムな体型になった。でもそれはただの作り話だったかも知れない。カラスはオナシスの為に実業家の夫と別れたが、そのころにはもう痩せていたという話だ。昔のオペラのプリマは総じて体格のい…