昼間に立ち寄ったことがないのでどの程度洗濯で賑わう店なのかはわからないが、ひどい汗をかく職業の客ばかりが利用している光景を、容易に想像することはできた。

アパートの敷地内に居住者用のランドリールームがあることを知らず初めてここを訪れたとき、クォーターコインの両替機と間違えて大量の洗濯用コインを買ってしまった。

そのせいでずっとこの店を利用しているが、週に一度のペースではなかなかそれを使い果たせず、「MOTTAINAI」という世界共通言語の概念だけがいまもここまで足を運ばせていた。

あたりはモール全体がクローズした後でしんと静まり返り、外灯のまばらな暗闇の中で、その店の軒先だけが駐車エリアのひどく荒れたアスファルトをぼんやり浮かび上がらせている。

僕は最後の乾燥機の運転が終わるまでの間、中古で買った韓国製セダンの車内で、ドアロックをかけて膝の上にヴァグラムを置き待機する。

ここに来るときに必ず護身用として携行しているこのフルオート式の短銃は、黒一色の無骨なデザインで一見とても重そうだが、オーストリア製のボディは大部分がプラスチックで構成された作りになっていて意外なほど軽い。

ここフロリダ州は銃規制が比較的緩く、市民権を持たない移民でも過去に重大な犯罪歴がなく少しの手間さえ惜しまなければ、みんなが平等にそれを持つことができる。

そう教えてくれたのは、勤め先の日本食レストラン、いわゆる寿司屋(米国ではスシ・バーとも呼ぶ)向けの食材や調理器具全般を扱う仲卸業者で、配送ドライバーを務めるヘスウスという中国系のガンマニアの男だった。さらにそれが個人売買であれば、もっとたやすく所有できると語り、彼はさっそくヴァグラムの値段交渉に話を進めて大きく身を乗り出した。

そんな相談を彼に持ちかける前に、このパーキングエリアで過去に一度だけ、ボロボロのアメリカ製ピックアップトラックに乗った黒人の若者たちの一人に銃を向けられたことがあった。