カタクリ
親花祭は十月二十二日と二十三日の二日間行われる。今は五月下旬だから、あと半年ないくらいだ。あの日以来、園芸委員の仕事が終わるとすぐに帰宅し、何の絵を描くか思案し続けている。お題はフリー。あまりに何も思いつかなかったので、一度副校長室を訪ねたことがあった。
何かテーマはないか、アドバイスをもらうためだ。ただ期待した回答は得られず、「君に任せたい」の一点張りだった。というより、さらに要望が追加された。あかりと協力してほしいという要望だ。
テーマを自分で決めることの教育上の意義はなんとなく理解できるけれど、あかりと一緒にということの意義は、全く理解できなかった。
今日も机上の動作は寂しい。部屋の天井を見つめる時間の方が長い。今まで放置されていた画材たちは、僕が机に向かってそれぞれを手に持った時、期待で色めき立っていたように見えたが、今では僕の鈍すぎる動作に期待が砕かれ、すっかりへそを曲げている気がする。
愛用の鉛筆が机上から転がり落ちる。完全に愛想を尽かされているな、これは。薄情な奴らだ。お前たちも少しくらい能動的に協力してくれ。画材に懇願する自分の思考が、ひどく情けなかった。
「颯斗、入るで」
祖母が香しい芋饅頭の匂いを引き連れ、ゆっくり部屋に入ってきた。淡黄蘖(うすきはだ)色の芋饅頭は祖母の得意料理で、母の大好物だった。
蒸す時間の違いなのか、たまに歯応えが固めだったりする。芋の甘みと生地の食感が調和していて、絶品の和菓子。芋饅頭の側には、歴代横綱の名が書かれた湯呑み茶碗に注がれたお茶が、ゆらゆらと湯気を立てている。