【前回の記事を読む】「花屋の手伝いより、遊ぶ頻度の方が多かっただろうに」…何かを隠しているかのようなそぶりで笑う。人は誰しも何かを抱えている。

アガパンサス

「ダメです。これは園芸委員同盟の仲だからこそだよ! それに颯斗くんが嫉妬しちゃうかもしれないしね!」

「嫉妬なんてするか! それに、そんな同盟組むことを了承した覚えもありませんが?」 親密になったわけではないけれど、人との関係構築において和也の先に立ったことが初めてだったので、今の現状に悪い気はしなかった。自分の矮小で醜い思考に嫌気が差すことは、今は脇に置かせてほしい。

「ひどっ! まあいいや、とりあえず帰ろうか! 颯斗くん、お・ご・り! 忘れないでね」

あかりのニヤニヤした表情。もはやあざといというより、お馬鹿的と表現した方が適切ではないか。

「え? 珍しい。じゃあ、俺も今日は颯斗におごってもらおうかな!」

「ん? あ、学級委員長様、まとめてごちになります」

「なんでだよ!」

あははっとあかりは爆笑する。なんだかんだその後、彼女の和也への呼び方は和也くんになった。女心と秋の空という言葉を聞いたことがあるけれど、とんでもない。

小花あかりの思考は夏の天気だ。掴み取ろうとしても、すぐに変化して手をすり抜け暴れ狂う。この和也への呼び名の変更に対して、ほんのちょっとだが鬱憤が心に堆積した。が、嫉妬と結論付けることは避ける。断じてそうではないからだ。