ウツギ

颯斗くんと別れた後、しばらく私は和也くんと二人きりになった。

気圧のせいではないけれど、最近また頭の鈍痛が通り魔のように襲ってくる。薬の量は以前より減ったのに、なかなか寝つけない時もある。出口の見えない症状とこれからも長く付き合わなければならないと思うと、余計に憂鬱になって心が闇に沈む。

いけない。人といるうちは、この状態になってはいけないと、心の中で自分を叱咤する。横を歩く和也くんに若干の緊張を感じながらも、それを気取られないように振る舞う。慣れている。大丈夫だ。

「颯斗はどうだった? 意外といいやつでしょ?」

和也くんの表情はいつもと変わっていない。ほっとした。こんな状態になってから、より人の感情の機微を的確に判断できるようになった。気がする。

「ん? うん! ……優しいところあるよね」

「うん。本当にいいやつなんだよ。あ、あとさ、あれもお礼言いたいんだ。さっき校門で、他のクラスの子が颯斗を美術部に勧誘してきたでしょ? うまくいなしてくれて助かったよ。これも意外だろうけど、あいつめちゃくちゃ絵がうまいんだ。うまいっていうか、あれは素人の俺から見ても天才だよ。

でもまさか名前も売れてるなんてさ。あの矢崎颯斗くんですよねって、すごくない? あいつ。でも今は、あんまり絵のこと言われるの嫌みたいだからさ、あかりちゃんがさっと間に入ってくれなきゃ、颯斗、どうなってたか」