第4章 脳梗塞の治療いろいろ
脳梗塞の治療いろいろ
脳梗塞治療は内科的治療と外科的治療に大別されますが、いずれの治療法も、目的は脳梗塞に陥る範囲をできるだけ最小限にくいとめることにあります。
また、脳梗塞は発症してから短期間(超急性期、急性期の2週間)のうちに、再発したり進行したりする危険性が高いので、それらを予防しようという狙いもあります。
同時に、手足の麻痺や言語の障害がある場合には、早期からリハビリ(理学療法、作業療法、言語聴覚療法)を始めることが非常に重要です。
いずれの治療法も日々に改善されていますので、本書はあくまで病態の理解と予防とに重点を置き、最近登場してまだ一般的でない治療法については簡単に触れるに留めたいものです。
◎ペナンブラ(penumbra)とは?
脳動脈が詰まると、その支配領域の血流は停止あるいは減少します。虚血中心部の神経細胞は壊死しますが、周囲からの側副血行がある周辺領域は、血流減少の程度が均一ではなく不完全な虚血状態となるため、機能が停止した神経細胞も虚血中心部の周囲は比較的長時間生存します。
その間に閉塞した動脈の血流が再開(再潅流:reperfusion)すれば、元の機能を回復しうるとされています。虚血中心部周囲の可逆的虚血領域のことをペナンブラ(半影帯)といいます。
ペナンブラは天文学用語で「太陽黒点外周部の半暗部」、あるいは「日食や月食の半影部」を意味し、虚血中心部領域がこの「半影」部分に似ていることから名づけられました。