海岸線の証拠

最終氷期の海岸線が、現在の海面から約一〇〇メートル低いところにあったと述べました。その証拠として、全世界的に大陸や島の沖合の海底には水深約一〇〇メートルの大陸棚が発達していることがあげられます。

大陸棚とは、現在の海岸線から緩やかな傾斜で続く海底のことで、その海底は水深約一〇〇メートルより深いところからは急斜面となり、さらに深い大陸斜面に続いています。

この大陸棚の端で海底の傾斜が変わるところを大陸棚外縁と呼びます。

全世界的に大陸や島の大陸棚外縁の水深は一〇〇~一二〇メートル程度の範囲に揃っていて、東京湾の海底のように大陸棚の海底に最終氷期の川の跡が残っているところも多くあります。

また、大陸棚の堆積物を調べると、大陸棚外縁に沿ってかつての海岸の(れき)(直径二ミリメートル以上の砕屑(さいせつ)(粒子)や砂など粒度の粗い堆積物があり、

海岸平野や大陸棚の掘削または大陸棚での音波探査で地層を詳しく調べることにより、かつての海岸の上に海面上昇または海面上昇の停滞期に堆積したと考えられる地層が発見されています。

このような証拠から、最終氷期の海岸線が現在の水深約一〇〇メートルにあったことが考えられるようになり、その考えにもとづいて港湾工事や海岸の埋め立て、海岸平野の地下などでのさまざまな建設工事が行われ、その考え方の正しさが確かめられ、利用されてきました。

このように、「最終氷期の海岸線が現在の水深約一〇〇メートル低いところにあった」ということは、人間社会での実際の活動(実践)に活用されて、過去に実際に起こったことが確かめられています。