【着陸】

飛行機は暗闇に眠る太平洋上を北に数時間飛び、給油のためのアンカレジ経由でアメリカ本土へと向かう。何度か睡魔に襲われ、気がつくと窓の外にアメリカ大陸が見えてきた。

街の様子を見ると、いろいろなペンキで塗った壁の家々、その周りの芝生や木々の緑、プールの青。

これまでテレビの中でしか見たことがなかったホームドラマの様なアメリカ人の生活がいま目の前で、現実のものとして存在していることが何だかとても不思議である。

飛行機はサンフランシスコ隣接のオークランドという街の空港に着いた。窓から見下ろす滑走路になんとうさぎが跳ねているのが見える。滑走路と野ウサギ。こんなミスマッチの様な感じこそ外国だ。

【カリフォルニア】

最初の1―2泊は一緒に渡米した方の友人宅にお世話になった。ペンキ塗りの壁の家々の佇まい、低い垣根から見える芝生や植え込みの花、道路や駐車中の車、道を歩く人々、見るものすべてが珍しい。

日差しは強いが湿気はそれ程でもない。しかし、夜ともなると意外に気温が低くなり、友人宅ではなんと暖炉に火を入れた。20代の若者たちの集まりである。

熱っぽく語りあう話題は、「ブラック イズ ビューティフル」や「アフロヘア」など黒人の人権の改善運動やベトナム戦争などアメリカの政治や社会、そしてマリファナなど当時の若者の関心の的であった事柄である。

初めて迎える異国の夜、アメリカの同世代の若者、暖炉の火、話題も関心も尽きることなく楽しく更けて行く。

 

👉『愉しい旅を! Enjoy Your Flight! 〜ハルの世界漫遊記〜』連載記事一覧はこちら

【あなたはサレ妻? それともサレ夫?】「熟年×不倫」をテーマにした小説5選

【戦争体験談まとめ】原爆落下の瞬間を見た少年など、4人の戦争体験者の話を紹介