【前回の記事を読む】【旅行記】愉しく、珍しく、忘れ難い海外体験を伝えたい――世界中の旅の記録をまとめた心躍る旅行・滞在記

はじめに

なお、これらのエッセイはあくまでも自らの記憶や当時したためた日記や雑記帳に基づいたものであるので、時間や場所の描写は必ずしも正確ではないことを予めご承知頂きたい。

初めての海外旅行 1971年のアメリカ

ずいぶん昔の話になったものだが、1971年の夏。大学3年生になった私は子供のころから夢に憧れたアメリカに二ヶ月の旅行をすることができた。

欧米などへはいとも簡単に出かけられる今日と違い、当時はアメリカ旅行と言えば普通ではなかなかできない大変な大ごとであったから、行きたいと思う気持ちは強くてもとうてい叶わぬ夢と思っていた。

しかし、自分の人生の中でなるほど「一念発起、何事も成せばなる」というのは本当なんだなぁと感心し、実感もしたのはこのときが最初だったような気がする。

というのは、当時の実家の経済状況やアメリカ旅行の費用などを考えれば、学生時代に二ヶ月もアメリカに行って来るなどと言うのは贅沢の極みで、自分にとって夢のまた夢のはずだった。

ところが、「よし、自分はアメリカに行くぞ!」と決めた途端に、友達を通じて新しいアルバイト話が飛び込んできて、元々やっていたアルバイトと合わせて一週間に7日、毎日アルバイトができることになった。

加えて、ちょうどそのころ嫁に行くはずだった姉の結婚式の日程がやや遅れ、この日のためにと母が蓄えておいた資金を融通して貰えることになった。

当時アメリカへの往復航空券の値段と言えば、やはり半端な数字ではない。正確な金額は失念したが、当時アメリカや他の外国からの先生や留学生、また、日本人学生も裕福な家の子女が多く、日米を往来する人も多かったICUはひと夏に2便アメリカ行きの飛行機をチャーターしていたので、かなり安い方であった。

それにしても1971年のことであり、今の金額に換算すれば20歳の若者には目が飛び出るほどの金額であった。