俳句・短歌 句集 俳句 日常 2025.07.28 【句集】小樽築港駅付近にて――俳句でつづる小樽の街並み。「石畳の 海岸通り ななかまど」他5句 青鈴 【第3回】 蒼 のり子 小樽の俳句でつづる四季の旅 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 小樽の街並み、四季折々の自然、日常のささやかな瞬間…五・七・五に込められた「小さな幸せ」。 五感を研ぎ澄ませて暮らすことで見えてきた景色や感情とは。「俳句は難しい」と感じている方にも手に取ってほしい、俳句にのせて綴った珠玉の句集。※本記事は、蒼 のり子氏の書籍『青鈴』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。 【前回記事を読む】【句集】小樽を舞台に「小さな幸せ」を五・七・五に込めて…「母の家へ 通ふ長靴 初列車」他三句 一 小樽築港駅付近にて 列車来る 新雪の カーブを抜けて 被写体を 追ふカメラマン 炎天下 石畳の 海岸通り ななかまど
小説 『曽我兄弟より熱を込めて』 【最終回】 坂口 螢火 用意した死に装束を、我が子に着せる。まだこんなに小さいのに、斬首だなんて…私が身代わりになって死にたい! 青天の霹靂とは、まさにこのこと。聞いた母の驚きは尋常のものではない。「エ――エッ! 何と、何とおっしゃいます!」声さえ別人のごとく裏返って、「厭です! 厭です! 渡しません、断じて……」絶望的な悲鳴を上げ、曽我太郎に取りすがって泣きわめいた。その母の絶叫に驚いて、一萬と箱王が「母上! いかがなさいました」と座敷に駆け込んでくる。「オオ――一萬、箱王」母は無我夢中で二人を左右にかき抱くと、黒髪を振…
小説 『ケルベロスの唄』 【新連載】 佐々木 啓文 フロリダに住む日本人。車内ではドアロックをかけ、短銃を膝の上において待機する。以前、トラックに乗った若者に銃を向けられ… まだいまも軽い耳鳴りがする。それに、いつもより嗅覚が一層鋭敏になっているせいで、思わず顔をしかめて息を止めた。さっき車を降りたときに見た月は、確かにほのかな火薬のような香りがした。そして、スパイシーなムスクの香水と、黒人女性のデリケートゾーンに塗られたローズ系のデオドラントなどが湯に溶けて混ざり合い、古い壁画の記録のように染みついた脇汗の臭いに熱されて乾いたものが、止めた呼吸の血流に紛れ込んで体…