【前回の記事を読む】時間をもて余した女子が集まれば、必ずと言っていいほどもめごとは起こるものだ

野宿

刺激的な中学生活を満喫していたある日、母の乳癌が発覚した。

当然手術をするものだと思い込んでいたが、母はしないと決めているようだった。民間療法で治すというのだ。

私と母は口論になった。

子どもの浅い知識だが、初期の乳癌だし、手術をすれば治るかもしれないのに、と思った。

しかし母は強情である。私の意見はまたも聞き入れられず、私の心はついに温度を失ってしまう。

私は家を飛び出した。あたりは真っ暗。この日から私の深夜徘徊は始まる。

夜は毎晩のようにゆうすけたちと集まり、たわいもない話をし、朝方帰る。夜中家族が寝静まった頃に家を出るのだが、帰った時にカギが閉まっていることがよくあった。そんな日はカギが開く朝まで待たなければならない。

春先でも朝方は寒い。夜中に風が来ない場所を探し回り、やっと見つけたのが、住んでいたマンションの貯水タンクの下にあるスペースだ。高さ70センチメートル、幅1メートル、奥行き3メートルほどで、しゃがんで入ると風がほとんどこない。

雨が降った日は最悪だ。地べたに座れないから、中腰で朝まで過ごすことになる。窮屈だが、誰にも邪魔されない安心感がある場所だった。

数々の野宿の中で忘れられない夜がある。