僕たちの周りで流れる時間はあっと言う間だった。

歳月の過ぎに憂いを感じる事はなく、幸せだけが僕の胸に押し寄せた。

僕はとうとうアンナと結婚したいと思う様になり、居ても立ってもいられずアンナがスーパーマーケットへ買い出しに出たタイミングを見て、宝石店へ出掛けた。

僕は三千ドルで指輪を買った。

ダイヤの埋め込まれたものだった。

サービスだと言うので僕は指輪の内側に刻印を彫って貰った。

「CLOSETOME(いつも隣に)」

僕は刻印を彫って貰う三十分だけ店内で待って、指輪を受け取って店を出た。

心が弾んでウキウキで家路に就いた。

嬉しさで興奮して、自動車で赤信号を一つ無視した。

幸い人は轢かなかった。

この指輪を渡す日を決めたい。

僕はカレンダーで仕事の入ってない日を調べた。

丁度七月四日は予定がない。独立記念日と言うのも良い感じだ。

この日にしようと僕は決めた。

僕はその七月四日にプロポーズする事にした。

場所はホテルのレストランを選んだ。

五十階建てのホテルで、最上階にレストランがある。

僕はレストランに予約の電話を入れた。

予定の日まで一週間しかなかったが予約を取れた。

プロポーズする事を伝えて、シャンパンを取っておいてくれて、その上ケーキを出してくれるとの約束を取り付けた。

安堵で僕は一服した。

そしてクローゼットの奥に隠した指輪に思いを馳せた。

アンナに思いの丈を伝え、指へとあの指輪を嵌める。

それだけの事が僕にはどこか儀式的で、特別な行いの様に感じた。

そわそわした僕は、化粧水をつけて気を引き締めた。

冷んやりしたメンソールでリラックスした気持ちになったのも棚から牡丹餅であった。

そして僕はプロポーズの言葉を考えた。

その日を特別な日にするため全身全霊を捧げようと心に誓った。アンナにその日空いてるか聞くと空いてると言い、食事の約束を取り付けた。

 

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