【前回の記事を読む】僕はこの仕事をしていると頭が痛くなる。社会の端っこの隅っこで生きる僕たちの仕事――生きる資格がない者のものと自覚していた

第一章 結

僕は自信を持っている事が二つだけある。

アンナを好きだと言う思いと、車の運転だ。

僕たちは、ドライブに出ていた。喉が渇いたのでコンビニに寄った。アイスコーヒーを二つ注文した。

僕はセルフのコーヒーマシンでコーヒーを淹れた。ガムシロップとコーヒーフレッシュを入れようと思ったが、アンナが車の中にいたのでアンナの分のコーヒーに入れるべきか入れないべきか分からなかった。

いつもアンナはどうしているのだろう。

僕は、アンナが好きなのに、こんな事も分からないで情けない思いに沈み込んだ。

 

僕は自信を持っている事が一つある。車の運転である。

知っている道に車を走らせていると、僕たちはあの日巡り合った公園へ来た。

公園には人の姿は見えず、鳩と猫が屯(たむろ)していた。

木々の隙間に、僕が好く腰掛けていたベンチが見えた。

「帰ったらクッキーでダージリンが飲みたいわね」アンナが言った。

僕はアンナの言葉に従って菓子屋とコーヒーショップに向かった。

そこでチョコクッキーとダージリンを買った。

僕はどうしても一つ食べたい気持ちになり、車内でクッキーを頬張った。

クッキーのこぼれカスがアンナの方へ飛んでいった。アンナはそれを中指と親指で挟んで口へ運んだ。

その仕草の底知れぬエロスに、僕は欲情した。

一時間程のドライブを僕たちは楽しんだ。

帰路でアンナが僕に接吻した。

アンナの愛を一身に受けた僕の頬に僕は満足し、少し嫉妬した。自分の身体の一部なのに嫉妬して僕はアンナの事が好きで好きで堪らないのだと思った。

僕は自分を愛おしく思った。家に着き、僕たちはティータイムを楽しんだ。