【前回の記事を読む】彼女と結婚したくて、宝石店で3000ドルの指輪を買った。彼女がスーパーへ買い出しに出たタイミング、30分で…
第一章 結
僕は仕事でヘマをした。ヤクを捌く簡単な仕事だった。
部下を使ったのだが、分量を伝え間違えて、注文の五分の一程の量しか持っていかせなかった。
相手方からは信頼を失い、親父からは叱咤を受けた。アンナの事を考えていて気が散ったのが失敗の原因だ。僕は落ち込んだが、気を楽に保とうとアンナの事を考えた。その日の晩御飯は味がしなかった。
そして約束の日が来た。僕は決意を固めた。全身を紺のスーツで固め、ポケットが膨らまない様に箱から出した指輪を忍ばせた。
そうして髪をジェルで固めた時、僕は全能感に満ちた。アンナを助手席に乗せ、車で僕たちはホテルに向かった。車窓から虹が見えた。雲の切間(きれま)に浮かんでいた。
虹の綺麗がアンナと重なった。
ホテルに着き、レストランへ入るとウェイトレスが席へ案内してくれた。僕たちはディナーを楽しんだ。シャンパンを開けて酔いが回って来た頃、僕は自分を奮い立たせ徐に口を開いた。
「伝えたい事があります。アンナこっちへ来て下さい」
僕は窓際の、夜景が一番美しく見えるところへアンナを誘った。アンナは優しく微笑みながらこちらへ来た。僕は頭が真っ白になって、何を言えば良いか分からなくなったが、アンナの目を見て平生に帰り、アンナに言った。
「貴女が世界で一番綺麗だから、貴女を幸せにするから、結婚して下さい」
「はい。いつまでも貴方の傍にいます」アンナは応えた。
僕は涙を流しながらアンナを抱き締めた。アンナの手が僕を優しく包み込んだ。僕はこの天国から離れたくないと思った。
抱き締める手を離す事が出来なかった。僕たちは結婚した。僕が二十一、アンナは十八だった。僕たちは指輪屋へペアリングを買いにいった。
指輪には二つとも二人の名前を彫った。家も買った。その時、僕は既にマフィアのボスの座を継いでいた。