【前回の記事を読む】僕はマフィアの家系に生まれたけれど、本当はマフィアの仕事が好きではない。ごく普通のありきたりの幸せを手に入れたい…
第一章 結
タバコを吸い終わり、僕はチェインスモークする。煙の向こう側に女の姿が見えた。
赤い服を纏い、キレのある目をしたその女に僕は心を奪われた。タバコを放り投げ、僕は女に声を掛けた。
「そこの貴女、もし貴女が私とランチする事を善しとして下さるのであれば、私にとって天上の喜びです。私は世界一の幸せ者だと言えます」
「貴方が私に美味しい料理を食べさせてくれて、注文の料理をウェイターが届けてくれる間に、その慇懃(いんぎん)な言葉を時間が許す限り聞かせてくれるのであれば、是非ご一緒したいわ」
「何なりと」
僕はその女とランチへ出掛けた。ティファリーの前のレストランだった。女の名はアンナと言う。
女はハンバーガーとサラダを注文し、僕はビールと女が注文したハンバーガーと同じものを頼んだ。その後、僕はその女を抱いた。
僕たちは、同じ部屋で過ごす様になった。同じ時間を流す様になった。アンナは十六で、品がある女だった。
マフィアの仕事のことを話すと受け入れると言ってくれ、周りには黙っておくとも言ってくれた。僕は、この上無い気分になり、アンナに時間の許す限り一緒にいてくれと頼んだ。
「貴方が私を愛して下さるのなら、私にとってこれ以上はないわ」