なんて、アユの心配を他所に考えていて、連れて来られた病院は決別したはずの大学病院だった。
結局。
脳にはダメージはなく、数針縫うだけで事なきを得たが、翌日の会社は大事を取り休むことに。
ただこれを境に、仕事へのアプローチを模索するようになっていった。
外はシンと静まりかえっているが、夜明けの前なのかカラスが時折、鳴き出している。
空は運ばれた頃とは違い、薄暗くなりだしている。
私は、帰りのタクシーの中で考えていた。
今晩は呑み過ぎていたのは確かだが、今まで倒れて更に出血するなんてことはなかった。
ここ最近は脚にチカラが入らず、落ちたモノを拾うのにも一苦労だし、躊躇することもある。
私は事務作業をする社員ではなく、売場という舞台で販売員を演じている。そこの業務にも支障が出始めてきた。
この先、お客様に迷惑をかけることが起きるに違いない、そんなことを考えていた。
とりあえず、今考えてもラチが明かない、姉の結婚式が終わってから考えることにする。
週末の姉の結婚式。
「弟さんはボクサーですか?」
と姉の旦那、すなわち、義理の兄の会社の上司に問われている。
滅多に見ない着物姿の母親には目もくれず、瓶ビールを呷る。
左目をお岩さんのように腫らした私がそこにはいる。