生物には大変興味を持った。校内にはメタセコイア(化石は発見されていたが中国で本物の木が発見された有名な植物だ)の挿し木で先生が植えられた木が育っていた。

また、メンデルの法則(遺伝)には大変興味を持った。先生の授業は学問だけではなく、人間くさい話も含んでおり面白かった。

〝休日に南京豆を貪りながらテレビを見て過ごしたが、こんなことは科学的に説明できないので全知全能の神様はいる〟と先生は言われた。私は「神は科学ではないか」と思っているので異なる考えではあるが、尊敬する先生が言うのでそうかも知れないと思った。

しかし、1953年にワトソンとクリックは「核酸の分子構造」の論文でDNAの二重らせん構造を発表し、遺伝の仕組みを明らかにした(大学で教わった)。個々の生物は設計図(DNA)を持っており設計図に従い活動していることになる。

大学で遺伝のメカニズムを学び、再度「神は科学で良い」と思えた。科学は神の領域の未知なる学問をどんどん解き明かしていく。

3年生では理系の進学クラスに入った。いよいよ追い込みの時期となったが、相変わらず父の商売は繁盛し、配達の仕事が入る。2階で勉強をしていたら直ぐに呼び出しが掛かる。家業は私の敵でしかない。

頭に来るので何日かはストライキで学校を休んだ。母は少し気を使ってくれるが、家族の理解は得られない。家族は大家族主義の体制で動いていた。特に長男には厳しい。

勉強をしようと思わなければ居心地は良いが、勉強をしようと思えばやり難い環境だ。大家族主義は私の敵以外の何物でもなくなった。親は子供の成長を願うものだが、自分たちの儲けを得るのに必死であり、子供にも手伝いを強要する。

現在の考えでは完全に児童虐待に当たるが、当時はそのような考えはない。自分で何とか抵抗するしか方法はない。

家では広瀬屋の仕事を中心とする大家族主義で動いているので、私の力で解決できない。私も家族が嫌いな訳ではない。

主義主張が異なるだけだが、私の力ではこの解決法が見つからない。小学校5年生の時に見た夢は遠くに行ってしまったが、科学を粘り強く求める他はない。

 

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