「ナギサ……って言ってもわかんないか。育ての親だよ。この前言ってた、リベドルトのロボット」
ナギサのことを話すと、どうしてもナギサが壊れてしまったあの日を思い出すから、それ以上のことをログには言わないようにした。ログはそれを聞くと、目をそらしてどこか気まずそうな表情をした。
「親、ね……。いい人だったんだろうな」
「うん! まぁ、とりあえず。進もう?」
「あぁ。でももう行くのか? 貴重なんじゃねえのか? こういう建物の跡とか」
「いいのいいの。あーし、そんなにお侍とか興味ないんだよね」
そのあとも、ログと話しながら進んでいった。
「そういえば、目的地はちゃんとわかってるのか?」
「うん。ナギサが残しておいてくれた地図があるからね。こっちの方向で、合ってるはずだよ」
「……なぁ、なんでその『ナギサ』ってそんな詳しいこと知ってるんだ?」
「え?」
ログは目を合わせずに不思議そうに聞いてきた。なんの悪気もないような、あっけらかんとした声で。
そういえば、考えたこともなかった。ナギサがなんでこんな、みんなが知らないような情報をたくさん知っているのか。ログが知らないような、世界の秘密ともいえるような情報を。
「なんでだろ? わかんないや」
「……そのナギサって人、どういう人だったんだ? なんでお前とナギサは会ったんだ?」
「やけにグイグイ聞くね」
なるべく触れてほしくないことを遠回しに言ったつもりだったけど、どうやらログは「察する」ということができないようで、ティーナの言葉に耳も貸さず、さらに聞いてきた。
次回更新は7月4日(金)、12時の予定です。