「え? 知らないの?」

「初耳だ」

「昔の人たちが作った家……じゃないな。なんて言ったらいいんだろう。こう、江戸時代とかそれぐらいのころに、えらい人たちが敵から守るためーとか、自分の力を示してやるぜー!とか、そういう目的のために作った建物のことを城って言って、それの跡地?って言ってた」

「昔の人たち? エドジダイ? なんだそれ」

ログはまだきょとんとしている。

「三百年前の人たち。文明が栄えていたころの人たちだよ。江戸時代はそれよりずっと前ね。侍とか、刀とか、ちょんまげとかあったころ」

「はぁ? 三百年前? 文明が栄えていたころ? さっきからなに言ってんだ?」

「え、いやだから城跡についての話を……え? まさか、知らないの?」

みんなが当たり前に知っていると思っていた、「三百年前に文明が栄えていて、人間もたくさんいた」という事実。まさか、知っているのは、自分だけなのか?

「あのね……」

文明を知らないログにいろいろと解説すると、ログは顔色を変えた。「あっ、やばい、なんか気に障ること言ったかな」と背筋がひやっとした。そして、ログはティーナの肩を掴みぐらぐらと前後に振った。

「おい! なんでそんな重要な情報を黙ってたんだよ!? 栄えてた文明ってなんだよ! もっと早く教えろよ!」

「やめてやめて! 振り回さないで! 頭痛いし吐きそう!」

ようやくログに振り回すのを止めてもらった。なんだか視界が歪んで見えて、目の周りには星が回って見えていた。

「ううぅ……」

「ったく」

「ひどいよ……それより、本当に知らないんだね?」

一歩歩けば前進する、それぐらい、当たり前のことだと思っていた。でもログはこのことを全く知らなくて、この情報は現在、自分だけの専売特許になっている。

「そんなの、誰から聞いたんだよ」

「え? どういう意味?」

「だーかーら!『文明が滅んだ』ってのは誰から聞いたんだって言ってんだよ」