丁度点検作業が終わった頃、はるか西の彼方の砂のうねりの中に、黄色い巨大な太陽が静かに沈んでいく。一日の終わりだが、あれはまた昇ってくる。太陽は孤独だが不滅だ。

井原と加藤は昼食と同じレストランで夕食を摂ったあと、指定されたプレハブ宿舎へ入った。

井原の部屋も加藤の部屋も広さは四畳半程度にシングルベッド、クローゼットと机がある。加藤は入社した頃のニホンタイヤの独身寮を思い出して懐かしく感じた。

この砂漠の中を職場としている従業員は、こんな狭い部屋で家族のことを思いながら二週間を耐える。そして一週間だけ家族のもとへ帰る。それを果てしなく繰り返す。

シーツは取り換えられており、タオルとバスタオルも新しいものが置いてあった。しかしハリールの言った通り、クローゼットや机の上にはこの部屋の住人の衣類が残されていたので、それには触れないようにした。

外で映写会があると聞いて二人は出かけた。

砂漠の中の映画館にはスクリーンが立てられて、映写技師が映写機の横で準備をしていた。もちろん座席はなく、砂の上にじかに座って観る。

加藤が、

「うあー、おれの小学生時代は夏休みに校庭にスクリーンが立てられ、十六ミリ映画が上映されたたい。『マラソン少年』や『つづり方兄妹』等を見たもんばい。思い出すなあ」とはしゃぐように言った。井原も「うんうん」と頷いている。

スクリーンの周りは満天の星だ。