「ちょっと、化粧室へ」と席を立ってトイレへ。

出たら、男性が急に手を掴んだ。

「美樹!」

「えっ? 尚樹?」

「会いたかった! ますます綺麗になったな」

「あら、ありがとう。どうしたの?」

「シェフが知り合いなんだ。結婚したの?」

「ええ、凄く幸せよ」

「僕は振られたのに」

「あら、ごめんなさい。ウフフフフ」

席を見たら、涼真さんが見ている。怖い顔している。えっ? 怒っている?

「じゃ、夫が待っているので」と急いで席に座った。

「知り合いに会ったの」顔が怖い。

「見ていた。何で美樹の腕を掴んでいたんだ」と強い口調で、

「通り過ぎた時に気が付いたんじゃないの」しれっと言った。

「誰?」

「知り合いで……前に話した事あると思うけど、プロポーズされた人よ」恐る恐る顔を見た。

「それで何気に手を握るんだな」

「何、それ。怒っているの?」

「面白くない! 僕の美樹を勝手に触るのが。挨拶すれば良かったかな」

「バカね~。昔の話でしょう。やきもち焼いている?」

「帰るよ! 家に帰りたい」

「急に! お友達に挨拶は?」

「いい! 明日、電話入れるから。早く!」