(素敵、流星くんと過ごす初めてのラブホテルとしては、完璧な雰囲気のお部屋を選べたわ……)

真由子は、内心で、満足のガッツポーズをしていた。部屋の手前にあるリビングテーブルのソファに座った真由子は、テーブルに置かれたドリンクやフードメニューを開いて見た。

この4月から流星は、外資系IT企業にエンジニアとして就職したばかりだった。そのお祝いの乾杯をしてあげたかったので、流星の好きなフードメニューやおつまみも取りたかったのだ。

こんな事をするのは、真由子の57歳の人生で初めてだった。流星が到着するのを、ワクワクした気持ちで真由子は待っていた。21時になった。部屋の電話がトゥルトゥルと鳴った。フロントからだ。

「お連れ様がお見えになりました。上がって頂きますけど宜しいでしょうか?」

「あっ、はい、どうぞお願いします」

ドキドキと心臓の音が聞こえるくらい鼓動が早くなっていた。ピンポーン! 部屋のチャイムが鳴った。

「こんばんは、花川です、開けて頂けますか?」

「えっ、嫌です……」咄嗟に言葉が出た。

「えっ、えっ、どうしたんですか?」「あ、いや、来るのは分かってたんですけど、ちょっとびっくりして……」

「……苦笑……で、大丈夫ですか?もう」

 

「あっ、あ、はい……」

緊張して真由子がドアを開けると、そこにはワイン色の本革のリュックを背負った流星が立っていた。店舗とは雰囲気が少し違う。

部屋に入って来た流星は、開口一番、

「わー、広くていい部屋だ。ベッドの天井にプラネタリウムまで付いてるんですねー。凄いなぁ……有難うございます。こんないい部屋に呼んでくださって」

キチンと部屋のお礼を言った。部屋のテーブルには、乾杯するシャンパンやおつまみ、流星が頼んだローストビーフ丼などが賑やかに並んだ。

「流星くん、就職おめでとう、乾杯〜」

「わー、嬉しいなぁ……シャンパン有難うございます。それにこのローストビーフ丼、凄く美味いです。お腹空いてますし」

乾杯の後、お酒好きな流星はウィスキーのダブルをロックで飲み、真由子はアルコールはあまり得意じゃないのでカシスオレンジみたいな可愛いカクテルを飲みながら楽しい夕食が進んだ。デザートのアイスクリームや、はちみつトーストを食べ終え、いよいよベッドに移って出張マッサージを受ける……。

時間は充分にあるから、真由子はシャワーを浴びて、ベッドでアロママッサージを受ける紙ブラとショーツ姿で布団にくるまって流星の支度を待っていた。 

次回更新は6月21日(土)、18時の予定です。

 

👉『東京フェイクLove♡』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「今日で最後にしましょ」不倫相手と別れた十か月後、二人目の子供が生まれた…。W不倫の夫婦の秘密にまみれた家族関係とは

【注目記事】流産を繰り返し、42歳、不妊治療の末ようやく授かった第二子。発達の異常はない。だが、直感で「この子は何か違う」と…