十七歳で出会ってから十年、太郎との距離も少しずつ縮まり、彼から念願の食事の誘いがあった。

これまで僕が誘えば必ず付き合ってはくれたが、彼からの誘いは一度もなかった。

ふくちゃんは、彼に大きな心の傷があるのではないかと心配し、事あるごとに彼をキャンデーに呼んだ。

大好きなオムライスを出されると、彼はその大きな口で勢いよく頬張る。

ふくちゃんは満足気に微笑みながら、彼の目にかかった長い前髪をヘアピンで留めた。最初は嫌がって外していたが、面倒になったのか今ではされるがままである。

なぜ彼が視界を遮るほどの長い前髪を切らないのかは謎のままだが、決して人と目線を合わさず、必要以上に口を開かないことも、何か事情があってのことだろう。

ふくちゃんも僕も無理に聞き出そうとはしなかった。ただ冗談ばかり言っては、彼が薄い笑みを浮かべるだけで満足していた。

待ち合わせの場所は、駅に直結したショッピングモールの時計台の下だった。

平日でも人が多く、休日とあっては家族連れでさらに賑わっていた。人混みが嫌いな彼がなぜ、この場所を選んだのかは不思議である。

しかも一番混み合いそうな昼の一時だ。

三十分も早く着いてしまった僕は、時計台が見える位置にあるベンチに腰を下ろした。

子供たちが時計台の周りで追いかけっこをしている。五歳ぐらいだろうか。男の子が、母親の手を振り払い追いかけっこに加わる。