姉貴が洋食にしろと言うので、僕はそれで計画した。これは僕の個人的な持論だけど、何のエビデンスもないけどさ、僕のような素人が西洋の料理でオモテナシしようなんて大それたことを考えたときは、デザートを先にプランするといいね。

デザートは最後の食事だから、結構、記憶に残るんだよ。

君にフレンチのコースを食べた経験があるかどうか知らないけど、あったとして、君さ、メニュー思い出せる? 大概の人はコースの料理で思い出すのは前菜とデザートだろ。肉のメイン料理なんて、どう調理されたかなんて覚えてはいないよ。思い出してみてよ。〇〇風〇〇ソースなんて誰も覚えてはいないね。君がよほどグルメでない限りはね。

ということで、僕は食事を用意し、彼女らは来て、食べて、飲んで、僕は称賛された。

僕は、女子がやってきた時には調理で頭がいっぱいで、玄関で通り一遍の挨拶をしただけだったけど、リビングから「すごい、すごい」って言う女子の声が聞こえるたびに、本当のことを言うと僕は、完全に有頂天になっていた。なにしろみんな結構いい子ばかりだったからね。

姉貴の友達ということは、イコール絶対に肉食女子に違いないと考えてレシピを作ったのがドンピシャ、ハマった。見た目、本当は高カロリーなのを気取られないように盛り付けて、皆でシェアできる料理を用意しておいたんだ。

超具だくさんのブイヤベースの後に、メインにはハーブ入りの自家製ソーセージを入れたポトフの大皿を出したところで、ようやく僕は息がつけた。最後のデザートは冷蔵庫に格納してあるからね。あとは出すだけ。

「慎二も来て飲みなよ」姉貴から声がかかった。

僕はそうすることにした。用を足して手を洗ってリビングに行こうとした時のこと。

トイレに向かう瀬菜さんと、狭いバスルームの通路で接近遭遇したんだ。

「本当、美味しい、慎二君ありがとう」って満面の笑みで、脱衣所の前で、すれ違いざまに立ち止まって、僕と50センチメートルもない、マジかっていうぐらい息がかかりそうな距離で、彼女は僕の目を見据えて言ってくれたんだ。