「光、やっと見つけたんだ! 見つかったんだよ」
父は興奮気味に僕を抱きしめた。
「なに、何が?」
起き抜けの寝ぼけた顔で首をかしげる。
「お母さんだよ! お母さんを見つけたんだ」
父は大きな目をさらに大きく開けた。つられるように、僕も目を見開く。
「お母さん? 生まれ変わったお母さんを見つけたの?」
僕の問いに父は、何度も大きく頷いた。母に会えると言われ、父に連れてこられたのは、隣町の小学校だった。
「もしかして、お母さんって今、小学生?」
父は無言のまま頷くと、道を挟んだ正門前の公園のベンチに腰を下ろした。ここは、父が母と約束したという、あの公園だった。
下校のチャイムが鳴ると、ランドセルを背負った子供たちが賑やかに出てくる。父と僕は、じっと様子を窺う。二十人ほどを見送った時、父がすっと立ち上がった。
数人で固まって帰る子供たちの中に一人颯爽と歩く、ぽっちゃりした、おかっぱ頭の少女がいた。
「あっ」
僕は思わず声をあげた。
少女の頭の上には、母と同じ虹色の輪が浮かんで見えたのだ。
「光、行くぞ!」
次回更新は6月19日(木)、21時の予定です。
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