前回のあらすじ
世は天保時代。衰退していた忍びの世界に、かつて戦国時代に栄えた忍び組織を復活させ、ふたたび忍びが暗躍する時代を迎えていた。
越後では最強の忍び軒猿毘沙門衆(のきざるびしゃもんしゅう)が密教の秘術を体得しあらたに結成され、忍び界に君臨していた。
軒猿毘沙門衆の伝説の忍び・ながれ星冬星(とうせい)は幻道波術(ガイ)と呼ばれる忍術をあやつり、隕鉄(いんてつ)(隕石)を玉鋼(たまはがね)とする天鉄刀(てんてつとう)を武器に無敵の強さを誇った。
冬星は幾多の激闘の末、記憶を失くし生まれ故郷の直江の津今町にたどり着いた。町衆とやくざの争いに巻き込まれていくなかで己の記憶を取り戻した冬星は、忍びの世界から足を洗うことを決意する。
しかしすでに敵の魔の手が伸びていた。謎の〝鴉(からす)〟と呼ばれる闇の組織は、幕府や藩の様々な部署にまで潜伏しており、国体転覆のためなら手段を選ばない卑劣な集団であった。
運命の渦に引き戻された冬星は、敵の頭目と対決する覚悟を決める。壮絶な総力戦を展開するが、冬星は天鉄刀と幻道波術で撃破していった。
ついに頭目との死闘を繰り広げ、満身創痍のなか死を覚悟する冬星であったが、異能童子(いのうどうじ)さくらの助けを借り、同士討ちを果たし頭目を道連れに追いやった。
冬星は敵もろとも冷たい海の藻屑に消えていった──。