初めての出版、初めての編集者との協働作業
――初めて作品を担当編集者に読まれたときの心境をお聞かせください。
友人に原稿を何度か読んでもらい、フィードバックを得ていたので、ある程度の自信はありましたが、さらに出版のプロの方に読んでもらいフィードバックを受けることで、相当程度クオリティを上げることができたと感じています。
――編集者に期待していたことはなにかありましたか。
プロの視点から、作品が出版に堪えうるかどうかという意見を期待していました。結果、期待通りのフィードバックをいただきました。
――編集者がいて「よかった」と思ったことはありましたか。
それは、これまで幾冊も本を読み、推敲し、世に出している経験に培われた眼を通して校閲してくれる、という安心感です。初出版ということもあり、プロの率直な意見は自分が悩んでいたところと合致していて、非常に心強かったです。
――「これでいいのかな」という迷いがあったということでしょうか。
ありましたね。「こうじゃないか」と思っていたところを指摘され、「やっぱりそうか」と自分の考えや推敲の仕方の確認ができました。まるで学校に通っているかのような価値のある貴重な経験でした。
今作で伝えたかったこと、今後の展望について
――今作で読者にどのようなメッセージを伝えたかったのでしょうか。
冬の剱岳の厳しさや崇高さと、山での「遭難」や死亡事故による悲惨さ、無力感を伝えたいという思いがありました。
遭難事故で死亡された方の遺族の中には、偶に、遭難に至った経緯に固執する方もいらっしゃいます。大切な家族が亡くなられたのだから当たり前ですが、ただ、その遺族が山のことを知らない方々だと特に「なぜ、遭難しなければならなかったのか」「なにか原因があったのではないか」といった思いに苛まれることがあるかと思います。
そもそも計画に無理があったのではないか?とか、計画を許可した山岳会の責任は?とか。井上靖さんの「氷壁」で表現されているような議論は、実際の遭難事故の現場でも、濃淡はあれど諸々生じる可能性があるものだと思っています。そういった、山岳遭難の悲惨さや遺族が感じる「不条理感」について、拙著を通じて少しでも伝えたいと思っており、故に、「山で死んではいけない」という理由の一端が伝われば良いと願っています。
――読者の方には、どのような気持ちで読み進めてほしいですか。
前述のとおりで、「山で死んではいけない」というメッセージが伝わると嬉しいです。あと、今回初めて自分の作品を出版したのですが、読んでいただいた方からのフィードバックでは、自分が思いもしなかったところに感動していただいたり、読者それぞれで刺さるポイントが異なることが解りました。とても新鮮でした。
――次回作は考えていますか。
はい、山をテーマにした作品は今後も書き続けたいと思っています。次回作のプロットも書き始めました。山において「生」と「死」という観念は切っても切り離せないのではないかと感じているので、次回作でもこういった要素が重要なモチーフになってくると思います。
――山岳小説以外で書いてみたいジャンルはありますか。
そうですね、今までサラリーマンを続けてきたので、その経験をもとにした作品にもチャレンジしたいです。
――作家を目指している方へのアドバイスをお願いします。
小説を書くには技術が必要なので、たくさんの本を読んで学ぶことが大切だと思います。私は通信講座で学び、技術を身につけました。自分のオリジナリティーを大切にしつつも、しっかりした基本技術を基盤とする姿勢は重要ではないかと思います。
――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
現在の自分の渾身の一作ですので、是非手に取って読んでいただきたいです。
――本日は貴重なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。
ありがとうございました。

山登りの魅力は、登頂したときの達成感と下山後のビールの格別さだと語る原さんが印象的でした。そんな原さんが紡ぐ「山」を舞台にした「生」と「死」の狭間での抗いようのない魅力は、次回作にも期待を抱かせます。新たな物語が生まれる日を楽しみに待ちたいと思います。
【緊急企画 第二弾!GLO独占インタビュー】原岳さんのインタビュー動画【前編】はこちら↓
【緊急企画 第二弾!GLO独占インタビュー】原岳さんのインタビュー動画【後編】はこちら↓
『小窓の王』本編のGLO連載はこちらから!↓