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【緊急企画 第二弾!GLO独占インタビュー】三足の草鞋を履く小説家原岳さんが語る〜小説を通して伝えたいメッセージとは〜【前編】
本格派山岳小説家としてデビューされた原岳(はらがく)さん。【前編】では、山岳ガイドとしての経験や『小窓の王』執筆に至るまでの裏側、さらに原さん自身の遭難未遂体験という驚くべき内容が語られました。
【後編】では、作品に込められた深いメッセージや創作の苦悩、そして今後の展望についてさらに掘り下げていきます。
キャラクター設定について
――続いてキャラクターについてお聞きします。主人公のキャラクター設定はどのようにして作り上げられたのでしょうか。
主人公の川田は、私自身がサラリーマンをしながら山に取り組んでいるので、全てではないですが、そのスタイルを反映していることは間違いないです。山を本格的にやる人は、「仕事を辞めて山に専念する派」と、「サラリーマンなどを続けながら山を楽しむ派」に分かれることが多いです。私は後者だったので、主人公の川田もそのような設定になったと思います。
――登場人物の中で特に思い入れのあるキャラクターはいますか。
みな思い入れはありますが、特に鬼島ですかね。
――登場人物のモデルになった人はいるのでしょうか。
複数の人物をハイブリッドした形で作っています。
――キャラクターを描く際に意識したことはありますか。
セオリー通りかもしれませんが、同じような性質のキャラクターにならないよう意識しました。また、極端な振る舞いをさせて他者と衝突するような演出も心掛けました。例えば、川田の彼女については、少し激しめの性格にして、彼女がストレートに放つセリフに意味を持たせたり、物語の中で彼女が果たす役割を重要なものにしました。
冒頭からぐいぐい引き込むための工夫
――ストーリー展開についてお聞きします。どこまで設定を固めた状態から書き始めましたか。
今回の原稿は何度も書き直しを重ね、100回近くは書き直したと思います。まずは登山シーンから書き始めたと記憶していますが、その部分は自分の経験を元に、実際に目の前で見た光景を思い出しながら構成していきました。そこに遭難の悲惨さや家族が抱える苦悩、不条理や無力感をどれだけ効果的に伝えられるかを念頭に置いて前後のシーンを考えました。
――結末は最初から決めていましたか。
はい、結末はかなり早い段階から決まっていました。
――冒頭から読者を引き込むために、特に意識した点は何でしょうか。
タイトルと冒頭はとても重要なので、編集者Mさんの意見も参考にしながら、結果的に冒頭部分だけで20回以上書き直したと思います。先を読みたくなるような緊迫感を意識して、強烈なシーン描写や表現を目指しました。
――執筆する上で楽しかったことはありましたか。
それはやはり小説が完成したときの喜びですね。普段から、論文や登山記録、会社の書類を書くことが多いため文章を書くことには慣れていますし、得意です。ただ、小説はそういった文章とは圧倒的に違う。
作り話であるからこそ、自分の書きたいことを極限まで客観的に書き下す必要があると思っていますし、「これで伝わるか?」という悩みは他の文章の比にならないと感じています。推敲の回数も桁が違いますし、そういった意味で「書く苦しみ」は大きいですね。
――それは創作の苦しさや葛藤ですよね。
そうですね。
――普段の執筆はどのようなペースで行っていますか。
『小窓の王』のときは、朝会社に行く前に、1時間ぐらいコツコツ書いていました。私の場合、小説を書くのは2時間ぐらいが限度なので、一気に書き上げることはできない。従い、毎日時間を作るように心掛けました。
――執筆中にアイディアに行き詰まったときは、どうしていましたか。
書くのをやめて、別の活動に切り替えることが多かったです。
