はじめに

2020年1月16日に発刊した『目からウロコ マンション管理のトリセツ』は、マンション管理業務に素人の私がマンション管理士に運良く合格し、以後約20年間にわたり管理士として活動した中で、マンション管理の専門家として管理組合の自立化を支援する実務書を世に出すべく自らの体験を赤裸々に記載したものです。

従って拙著の売れ行きよりも、多くの悩める管理組合の方々の参考になればとの思いから近畿圏の主要な図書館に謹呈する等、多数の区分所有者の目に触れる事でマンション管理の実務に役立てれば良いとの願望を込めて書きました。

しかるに、予想外に好評で2021年9月末現在で1万部に届く売れ行きだと聞かされる中で改訂版を促す声もあり、思い切って今回はマンション管理の分かりにくさを図表等で補完するために新書版から単行本に変えて発刊する事にしました。

一方では、この1年半でマンション管理業界は様変わりしました。

契機は各紙に掲載された滋賀県野洲市の管理不全マンションの全景写真と行政による強制解体の新聞や週刊誌の記事です。

行動経済学によると私たちは損する事に敏感ですので、このような管理不全にならないための方策、すなわち「長期修繕計画を策定し計画的に修繕する事がマンションの資産価値向上になる」との国土交通省のコメントに影響を受けたようです。

加えて、何時の間にか2020年の6月にマンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)が改正され、それをチャンスと捉えたマンション管理業界は「マンション管理の五段階評価」を行う仕組みの構築を狙っているようです。

換言すれば、マンション管理業協会を頂点とするマンション管理業界のピラミッドが構成され、マンション管理の専門家であるマンション管理士をも飲み込もうとする策略が既成事実化されつつあります。