通称ケンジと呼ばれていたこの第三の男は、町田賢二と名乗った。防犯カメラには細面に映っているが、斜め上から撮られたためと思われ、実際にはどちらかと言うと丸顔の優しそうな顔立ちで、その道では確かにもてそうだと特に根拠もなく木村は思った。

二人が部屋に入って刑事であることを告げた時、町田は驚愕の表情を見せた。しかし、すぐに観念したように町田賢二であると名乗ると、いつか刑事さんがやってくると思っていたと言った。

その言葉に、秋月と原は町田がホンボシかと一瞬色めき立った。しかし、その意味するところは違っていた。町田は、ジョセフ・ロペスと深い関係にあったことを認めた。

そのジョセフから、国枝和子が殺害された夜の防犯カメラに自分が映っていて、警察が捜していることを聞かされていた。

自分は事件とは関係ないから警察に申し出たかったが、ジョセフから絶対にだめだと言われていた。ジョセフが、立場上、同性愛者であることを絶対に知られたくないという想いからのようであった。

そうして見ると、初動捜査時からジョセフが非協力的な態度を取り続けていたことも理解出来た。

「事件のあった一月六日の夜のこと、聞かせてもらえますか?」

木村が、穏やかに質問を始めた。

「あたし、関係ないですよ。ジョセフの部屋にいて何も知らないから」

「何時頃、部屋に行かれたんですか?」

「夜の十一時半過ぎだったかしら。防犯カメラに映っていたんだから、知ってるんでしょ」

確かに、町田が十一時三十五分にマンションに入った事は、防犯カメラで確認されていた。時間はほぼ正確だ。

次回更新は6月3日(火)、22時の予定です。

 

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