【前回記事を読む】【昭和平成 “金融界” 実録】「法に触れなければ何をしても良い」と新規業務開発に配属された私は、金融危機只中の英国の銀行から…
はじめに
1.Lloyds Bank 劣後債案件
諦めるのが勿体無く、UBS を再訪の上相談したところ、それでは劣後債ではどうかとのことになるも、行内で再検討したところ、“劣後度合にも依るが、相手の資本に勘定された分、こちらの資本を減じなくてはならない(例えば、発行額の 50%が資本算入されれば、当行の資本もその分同額減じる)”とのことで、結局、意味を成さないとのことになった。
何か新しい収益機会を具現化させなくてはならないのが、開発グループのアサインメントであったので、簡単に give up する訳にも行かず思案を巡らせていたところ、以前、Fリースの担当者が“リース会社でも実質的なローンを打てる”と言っていたことを思い出した。
開発グループ第一弾案件として、航空機ファイナンスを系列のFリースと Ansett 社に行った際に親しくなった担当者に電話を掛けて、隣の大手町ビルにあったオフィスを訪問した。
彼の話に依ると、「“スクエア トリップ”という金の売買を仲に介した取引を咬ませると、リース会社でもローンと同じ効果のファイナンスができる」とのことであった。
要はリース会社は金の売買が許されているので、特別目的会社を介して金を買って同時に売却し割賦で回収すれば、金のリースを通じてローンを相手に供与したのと同様の効果が生じる。またその一方で将来の金の取引価格も全て先物で予約しておけば、利回りもローンと同様に確定し得るというスキーム(仕組み)であった。
ここで、リース会社が定期的利払いの伴う銀行の劣後債を持つことは可能であるし、自己資本より控除されることは無いので、この手法であれば可能であるかもしれないという糸口が見え始めた。
ただ、物事が進む毎に問題がより多く残っていることに気付かされる。先ず、①関連リース会社にそんなことをさせて良いのか、との問題。リスクを十分に理解した上で、相当な金額(2億ドル)を出せるのか。②このスキームを用意し、完済までの管理は誰が行うのか。③更に、劣後債の引受をするのは誰か。
その頃は、自行の欧州での証券子会社は未だ設立されたばかりで力も無く、実績は少なかった。