義継は、必ず此れはと言える一枚が撮れる可能性があると思っているのだろう。其の為に何枚も撮っていく。
再び二人で第二鳥居を潜って拝殿前の敷地に入った。出る前より人が増えてる。人々が居る風景を義継は撮り続ける。
其の行動を見続ける征一は、必ず爺さんは良いのを一枚撮るだろうと感じていた。というのも、征一は義継のカメラの腕前を知っているからだ。
そして時間は過ぎてゆき、昼食時と成る。
「飯を食べに行こか」
義継は征一にそう言う。
「何処ですか?」
征一としては、食事をする店を知りたい。
「前以て決めていたが、此の近く鰻の名店、長寿軒だ。それに予約もしているしな」
神宮からは可なり近いのか、すぐに其の店の前まで来た。其の二人の目の前を、追い越すように一人の客が店に入っていった。
そして其の後に続くように、義継と征一は店に入った。征一は店の中を眺める。まだ十二時なのに、案外客が入っている。
遅れて入ったり予約していなかったりしたら、席に座れないかもしれない。此の店は、其れだけの名店だ。
義継は店の人に近付く。
「高井と言う者だが、予約席はどちらかな?」
義継が尋ねるように言うに、店員は、「其れなら、あちらです。案内します」と、答えた。
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