「仕事で神宮や神社に来て、何故、参拝しないのかと聞かれた事があるのでは?」
「そうだな、あるな」
「やはり。其れで、どう答えました?」
「そうじゃな、こう答えたな。神は仏の臣下で、仏の信仰で守護してくれる存在だと。まあ、此れ以上事細かく言うと、相手は分かり辛くなる」
少しの間の会話が終わると気付いたら、拝殿の敷地に入る第二の鳥居が目の前にあった。少し話しただけでずいぶんと歩いてきたようだ。
義継は仕事で此処を潜る事があるそうだが、参拝はしない。今日はどんな写真、撮るのだろうと征一は興味が湧いた。
義継はプロ用の大きめのカメラを持って、何処(どこ)が良いのかと写す場面を捜し始めた。写すべき場面の写真の条件は、雑誌の読者が興味を持ってくれる場面であるのが第一だ。其れは義継だけでなく、征一も素人ながら分かっている。
「今日は、何(ど)れか良いのが撮れそうですか?」
征一はそう尋ねるように言う。
「そうやな、運と良いシーンを逃さない事かな。まっ、一日が終わらないと、分からない」
義継は良いシーンがないかと、何処ぞかんぞとカメラを手に取って歩き廻り始めた。朝早いからなのか、拝殿前の人の数は少なめだ。
朝の風景は良さそうと思うのか、義継は何回かシャッターを押している。其の義継が思い出したかのように、第二の鳥居を潜って参道の方に出る。
征一も彼の後に続いて出た。朝の参道を歩く人は少ない。それに静けさもある。此の時間帯なら、朝の参道は可なり良いシーンだ。
征一は義継のそんな考えを読み取る。参道の風景を撮り続ける義継。
参道を歩く人の姿、鬱蒼とした参道の左右の森、征一も素人ながら、素晴らしい景色が撮れそうだと感じた。