【前回の記事を読む】彼女のあの目に見られると、世界の全てが奪われて、僕は彼女の事しか考えられなくなってしまう。僕の目には彼女しか映らない。
第一章 結
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同じ時間、アンナは彼の事を考えていた。
リィド、貴方は優しいわ。
帰って来るといつも肩を抱いてくれるし、夜には私を温めてくれる。
心まで温まるわ。
でも、貴方は私の前で一度怒声を上げた事があるわね。
何故、いきなり怒鳴ったのかしら。
でも、私にじゃないの。
壁に向かってなのだけど。
きっと貴方は腹の虫の居所が悪かったのね。それとも、頭の中で誰かが貴方に侮辱の言葉を掛けたのかしら。
それとも、いつもの頭痛なのね。
貴方は一度も頭痛を私に訴えた事は無いけれど、私は気づいているのよ。
貴方は、頭痛がすると左手で頭を押さえる癖があるのよ。
それで気づいたの。
私といれば頭痛が治まるのかしら。
貴方は頭痛になると決まって私の傍に寄るわ。
それから抱き締めるわ。
薬を買って来ようかと思ったけど、気づかせまいとしている貴方の気に触れるリスクがあるわね。
それで、頭痛には触れずにいるわ。
私、貴方に任せきりでいるわ。
ただし、貴方私きりね、頭痛を和らげられるのは。
神様に頼んだわ。
それからイエスと約束したわ。
貴方、私の傍にいる時だけは、頭の痛みから解放されて、それで貴方は私を頼る様になったのかしら。
いいえ、その前からね。
私たちずっときっと二人離れずいられるわ。
私、貴方の薬になるわ。
ヒポクラテスの様に誓いを立てるわ。だからきっとずっと効くわ。
頭痛はきっと天罰ね。
貴方はマフィアで、人を殺すわ。
なのに心は誰よりも綺麗なの。
それで罰が下ったわ。
でも、貴方を天は見捨てたりしないわ。
何故、私貴方の傍に。
これから貴方に手紙を書くわ。ずっと持っておいて欲しいの。
そうすれば、いつでも私に会えるから。痛みもきっと和らぐわ。