臨床実習は長くて八週間、臨床現場に身を置き、バイザー(学生指導を担当する理学療法士)の方から指導を受け、学校で学んできた知識・技術を確認するものです。実習地にもよりますが、毎日明け方までレポートを書き、十分な睡眠時間を確保できない生活が続くこともあるため、健康な学生さえも見学中にウトウトしている姿を見ることは日常茶飯事です。

私の場合、睡眠不足の状態では日中にナルコレプシーの症状をコントロールすることはほぼ不可能な話です。実習が始まる前から、ナルコレプシーのコントロールができるのか不安で仕方ありませんでした。今だからこそ言えますが、隙間時間でトイレへ行き仮眠をとったり、昼休みに寝たりと様々な工夫をして必死になって実習を乗りきりました。

実習後にバイザーの方から「病気をコントロールしてよくやっていた。現場でも大丈夫でしょう」と言っていただけた時は、本当に泣けてきました。

この時の涙は何の涙なのかよく分かりません。やっと苦しい環境から離れることができるからなのか、実習を終えた達成感なのか、バイザーの方に認めていただけたからなのか、トイレでこっそり寝ていたうしろめたさなのか。実習を乗りきるための工夫が正しいカタチだったのか未だに判断できません。

実習を終えた時に、実習を乗り越えた安心感の裏に、「本当に理学療法士になっていいのか?」といった不安が生まれていました。

充実した大学生活を送り、臨床実習をなんとか乗り越えました。その後、国家試験もなんとか乗りきることができ、卒業することができました。しかし、臨床実習を終えた時に感じた不安と再び向き合うことになるのです。

それは大学の友人が私に言った一言がきっかけになりました。

その友人は「お前が治療している時に寝たら患者は死ぬかもしれないんだよな?」と一言私に言いました。正直に言うと、その友人の的確すぎた一言にかなりムカつきました。臨床実習を終えた時に感じた不安を無意識に避けていたからこそ、的確すぎた一言にムカついたのでしょう。

それからは、自問自答の日々でしたが、このことがナルコレプシーと自分、今後の人生、価値観について時間をかけて考えるきっかけになりました。